今回は非常に初歩的な「ブロックチェーンとはそもそもなんなのか」と言うお話をしたいと思います。
ブロックチェーンってなに?
いつも私のブログの内容は上記のような仮想通貨・ブロックチェーンの業界内部の人向けの記事が多めなのですが、先日質問箱で質問を募集したところこのような質問を多くいただきました。
やはり「そもそも仮想通貨勉強してみたいけど何から勉強していいかすらわからない」と言う人にとっては、規制の話や世界の市場の話よりも、簡単な技術の解説があった方が良いだろうと思うので、今回はより多くの読者のみなさんが読める初心者向けの記事を書いていきたいと思います。
今回の記事のアウトラインはこんな感じです。
1.「ブロックチェーン」という言葉は何か?分散型台帳との違いは?
2.ブロックチェーンには2種類ある(パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーン)話。この二つの違いは?
では以下解説していきます。
ブロックチェーン総論。ブロックチェーンとは何か?
ブロックチェーンとは一言で言うと分散型台帳技術の一種で、世界中のコンピュータが改ざんなく取引を記録できるようにするための技術です。もともとSatoshi Nakamoto と言う匿名の人物が提唱したbitcoin(ビットコイン)の取引記録を改ざんなく記録するための基盤技術で、元々はビットコインに使われていたものを「ひょっとしたらビットコイン以外にも使えるんじゃないか?」と考えた人たちによって開発が進んできた技術です。
そもそも分散型台帳技術とはデータを記録している「台帳」と呼ばれるものが、従来は1つのコンピューターだけで監視されていたのに対して、複数のコンピューターが監視することでより分散したデータの管理を実現するための技術です。
これについてはこちらの記事でより詳しく解説していますので、ご覧ください。
「分散型」の意味。分散型データベース(分散型DB)とブロックチェーン、分散型台帳の違いとは? | やまとは国のまほろば (yamato0506.info)
この記事をお読みいただくとわかるのですが、ブロックチェーンのネットワークにはいくつかの階層があって、説明に必要な範囲で言うと
1.最下層に分散型台帳技術がある
2.その上に乗っかっているのが、台帳の管理を巡る合意形成手法=コンセンサスアルゴリズム。
さらに、
この2.において、データを改ざんできないように過去のチェーンに接続するための合意形成をどのようにするかを巡って、
2-1.不特定多数のコンピュータが合意形成に参加できる場合=パーミッションレスブロックチェーン、またはパブリックブロックチェーンと呼ばれる。
2-2.特定のコンピュータしか合意形成に参加できない場合=パーミッションドブロックチェーンと呼ばれる。その中でも
2-2-1.数社が参加できる時はコンソーシアムブロックチェーンと呼ばれ、
2-2-2.一社の中でしか利用されない場合はプライベートブロックチェーンと呼ばれる
という構造になっています。
要するに合意を形成してデータを改ざんできないようにブロックに格納して、それを過去のチェーンにつないでいくことから「ブロックチェーン」と呼ばれるようになったのです。実際にSatoshi Nakamotoがbitcoinを提唱した元々の論文においては、blockchainと言う言葉は一度も登場しません。
改ざんなく取引できることの重要性。なぜブロックチェーンが注目されるのか?
このブロックチェーンがもてはやされている、と言うか、潜在的にインパクトがある技術であると言われている理由は「データが改ざんできないように皆で監視し、改ざんされた時にはわかるようになっている」と言う点が大きいのですが、「ん?なんで改ざんできないくらいでしかない技術がこんなにもてはやされているの?」と思ったかもしれません。
しかし我々は普段意識していないだけで、利害関係が一致しない相手を信用するために多大なコストをかけています。これを「信頼のコスト」とか「ソーシャルコスト」と呼んだりします。
例えば日本から海外にいる人にお金を送金したいときにわざわざ現地に行くのは手間だし、届いた・届かないでもめるのも手間なので、これを避けるために銀行という信頼できる第三者(トラステッド・パーティー)を置いているし、クレジットカード会社なんかもわかりやすい例かもしれません。これがビジネスで企業間で貿易をしたり、銀行の本人確認なんて業務を想定するとよりわかりやすいかもしれません。
このような異なる利害関係をもつ当事者同士が同一台帳にて共有しておいた方が良い情報を管理・参照することで、中間のトラステッドパーティーを不要にしたり、あるいは会社間でのビジネスの摩擦を避けられると言うのが、パブリックブロックチェーンと分散型台帳の特徴です。
ブロックチェーン各論。「パーミッションド」と「パーミッションレス」の意味とは?
さてここからはブロックチェーン各論に入っていきます。
先述したようにコンセンサスアルゴリズムの種類によって、というか合意形成に参加するコンピューターによってブロックチェーンは「パーミッションドブロックチェーン」と「パーミッションレスブロックチェーン」の2つに分類されます。
パーミッションレスブロックチェーンおよびパブリックブロックチェーンの代表的なものが仮想通貨、特にビットコインです。例えばビットコインは全世界のコンピューターが参加しようと思えばマイニングに参加できます。このように中央管理者がおらず誰にでも門戸が開かれているのがパブリックブロックチェーンです。
だから誰でも入れる分、逆に悪意がある人がブロックの接続に関わるとまずいので、悪意がある人がいたとしてもそれをどうやって乗り越えて正しい意思決定をしていくかを決める合意形成がすごく大事になってきます。これをコンセンサスアルゴリズムと呼びます。
逆にパーミッションドブロックチェーンは既存の大きい企業などが参加できる人を限定したブロックチェーンで、このチェーンでは管理者からオーケーをもらってない人は参加できません。
このパーミッションドブロックチェーンと言うのも中ではさらに2種類に別れていて、パーミッションレス(パブリック)ブロックチェーンがすべてのノード(コンピュータ)が参加できたのに対して、
1.複数社で限定されたブロックチェーンを作ること=コンソーシアムブロックチェーン
2.ある1社だけが社内でブロックチェーンを利用すること=プライベートブロックチェーン
と呼びます。
パーミッションドブロックチェーンの代表的なものにはLinux Foundationが主催するオープンソースのHyperledgerがあります。
「ブロックチェーン」と言う言葉の使用法がバラバラなことで起きている混乱
ここまで簡単にブロックチェーン総論/分散型台帳との違い、ブロックチェーン各論について超ざっくり書いてきましたが、最後に一つ重要な指摘をしておきたいと思います。
それは人によって「ブロックチェーン」の指す世界観が全く違うために世の中で「ブロックチェーン」の単語を指す時、その人のポジションによって単語のスコープが全く違ってきてしまうと言う点です。
人によってはパブリックブロックチェーンだけを指してブロックチェーンと言う人もいるし、逆にコンソーシアムブロックチェーンやプライベートブロックチェーンしか開発してないのにブロックチェーンと呼ぶ人もいます。パブリックブロックチェーンの支持者には「誰でも入ることができないコンソーシアムやプライベートブロックチェーンは分散型の思想がなってない!ただの中央集権的権力の業務改革にしか使えないじゃないか!」と思っている人が国内外問わず多く、そういう人たちにとってはコンソーシアムブロックチェーンやプライベートブロックチェーンしかやってないのにブロックチェーンをやってます、と言われると話が噛み合っていないと感じることが多いです。
ですのでネットでもしブロックチェーンの情報を調べる時は、その作者が言ってるのがパブリックブロックチェーンなのかプライベートブロックチェーンなのかをどのコンピュータが参加できるのか?と言う観点からちゃんと見分ける必要があります。
今回は「そもそも仮想通貨とは何か、ブロックチェーンとはどんな技術なのか」という話をしました。質問箱で質問してくださった方、ありがとうございました。参考になりましたら、嬉しいです。
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