初心者が仮想通貨・ブロックチェーン技術を学習するためのおすすめ本・書籍を紹介する。金融、技術からプログラミングまで。

以前このブログでは仮想通貨・ブロックチェーン初学者にとっての学習法や情報収集についてまとめました。

関連記事:仮想通貨(暗号資産)・ブロックチェーン技術の勉強法。書籍から情報収集、メディアまで。

今回はその中でも特に初学者向けの内容として、オススメの書籍を広くコンプリートしておきたいと思います。

私が初心者の学習に書籍を勧める理由

個人的にはブロックチェーンの情報を入手する媒体としては

  • 書籍
  • ネットのメディア
  • podcast,Youtubeなどの音声番組

などがあると思いますが、初心者の段階でブロックチェーンの全体像を掴むにはインターネットやpodcastはやや不向きだと思っています。これには明確に理由があり、

  1. インターネットの性質上、コンテンツが細分化されており体系だっていないため、情報の収集方法を自分なりに確立させたブロックチェーン関係者のような人でなければ適切な情報を探し出すのが困難であるため
  2. 初心者にとって本当に知りたい「そもそも仮想通貨って何?」「そもそもブロックチェーンって名前しか聞いたことがない」「それが既存の社会にどういう影響を与えるのかわからない」といった疑問に正面から技術的な側面にも着目しながら答えている既存メディアが非常に少なく(あったとしても英語媒体)、多くはSEOに特化する一方技術の正確さや情報の新規性に疑問の残るアフィリエイトサイトが検索上位に表示される結果、本当に仮想通貨やブロックチェーン技術について知りたい場合に体系だった正確な知識を入手することが難しい

という二つの理由があります。

このような理由から仮想通貨やブロックチェーンについて全くの初心者の方はまずは書籍で学習するのが良いと思っています。

 

ブロックチェーン技術を取り巻く複数の観点に着目して本を選ぼう

ただし書籍の中にもブロックチェーンの技術に関して疑問性があったり、ブロックチェーンをなんでもできる魔法の道具であるかのように喧伝するものも多くあります。

その中でやはり業界の専門家や関係者からの評判が良いもの、また私が読んでよかったと思ったものを「ブロックチェーンを取り巻く複数の領域」に合わせてセレクトしました。

ご紹介するのは

  1. ブロックチェーン全体に関する総論的な書籍
  2. ブロックチェーン関連の規制
  3. ブロックチェーンおよび仮想通貨と既存金融
  4. ブロックチェーンと産業
  5. 技術的な仕様について

です。以下に数冊ずつご紹介します。

総論

ブロックチェーンをゼロからQ&A方式で学んでいく本です。初心者にとっては情報過多にならず薄くもなく適切な分量でしょう。情報がやや古いのが難点ですが、本なので致し方なし、初心者ならこれくらいで問題ないでしょう。

取引所コインチェックのCOOだった大塚さんによって書かれた本です。おそらく仮想通貨(暗号資産)業界の人が書いたなかでは一番初心者向けで、量も少なめです。コインチェックはハッキングが起きてしまい、世間からの目は厳しくなったものの、業界内では依然として評価が高い取引所ですし、この本自体の価値もハッキングによって毀損された訳ではありません。安心して読みましょう。私はこの本が初めて読んだ仮想通貨入門書でした、ありがとう大塚さん。

著名な野口悠紀雄氏によるブロックチェーン技術と社会、国家に与える影響を考察した本です。学者の書いたブロックチェーンの著書の中ではかなり初心者にわかりやすいですし、学者らしい緻密な考察の跡が見られます。

 

規制

2018年後期に出版されたばかりの新しい本です。仮想通貨やブロックチェーンを取り巻く規制の方向性は非常に変化が激しく、また立法についてではなく自主規制団体による規制が大きなプレゼンスを占めているため、極力新しい本で学習するのが良いでしょう。

この本はブロックチェーンの仕組みから貨幣学・経済学的な価値を考察し、さらに現在仮想通貨を規制している「資金決済法」を逐条解説していて、とても便利です(書評もありますのでここから必要な方は過去記事どうぞ)。

規制に関する本についてはより詳しくこちらの記事をどうぞ。事業者ならまだしも、初心者ならあまり多く触れる必要はない領域でしょう。

関連記事:仮想通貨(暗号資産)・ブロックチェーン関連のオススメ法律書一覧

 

金融

業界内でも非常に評価の高い一冊です。エンジニア以外が書いた仮想通貨・ブロックチェーンの本がどうしてもこれらを魔法の技術として喧伝する内容のものが多い中で、日銀や既存金融について精通した著者が正面から仮想通貨の決済等における問題点を指摘した本です。すでに情報がやや古くなっているためブロックチェーンについての持論は一考の余地ありですが、それでも名著として評価が高いので、一読をおすすめします。

これも非常に評価の高い一冊です。早稲田大学のご高名な岩村充教授によって書かれた本で、これも元日銀の著者による既存の金融システムとビットコイン・ブロックチェーンの関係性について俯瞰して書かれています。

岩村教授は暗号学にも造詣が深く、個人的には社会科学系の大学教授が出版された本の中ではもっとも技術的な理解が正確だと思います。

 

産業領域

非常に著名な本で、業界では知らない人はいないドン・タプスコット氏の著書の翻訳本です。やや分厚いですが、ブロックチェーンの技術から始まり、各産業においてブロックチェーンがどのように活用されるのかを広く書いています。

ブロックチェーン技術

非エンジニア向け

原点にして頂点とされる「マスタリング・ビットコイン」です。名前の通り仮想通貨およびブロックチェーンを生み出す契機となったビットコインについての技術的な仕様、何が凄いのか、という点について、先述した本などとは異なりエンジニアの視点から記述されています。

初学者〜中級者向けの本ですが、仮想通貨・ブロックチェーンの理解には避けては通れない名著です。

よりコンパクトで薄いコンサイス版もあるのでエンジニアではないビジネスサイドの方や営業職の方はこちらで十分かもしれません。

仮想通貨技術の中核を支えているのは暗号学で、暗号学の理解の度合いが仮想通貨・ブロックチェーンに対する理解の度合いを大きく左右します。その意味では暗号学およびセキュリティに関する知識、例えば「公開鍵暗号方式」「ハッシュ関数」などは仮想通貨・ブロックチェーンの勉強の中で大きなウエートを占めています。そんな暗号学で技術者以外にも必須となる知識が理解できるように専門性を極力排除したのがこの本です。少々分厚いので、ざっと眺めてから他の本でビットコインを勉強しつつこの本を辞書がわりにしても良いかもしれません。

エンジニアで仮想通貨(暗号資産)およびブロックチェーンの開発に携わりたいと考えている方は必読です。

エンジニア向け

イーサリアムのスマートコントラクトを記述するためのサンプルコードや解説が多く含まれており、イーサリアムとビットコインの実装の違いなどにも踏み込んでおり、エンジニアにとっても実践的な良書です。スマートコントラクトは一度デプロイすると改変するのが非常に困難なため、バグや脆弱性に対する対策が必須であり、またコード監査などもそれゆえに需要があるわけですが、この本では脆弱性やセキュリティについてもしっかり記述されているので安心です。

おそらくブロックチェーンエンジニアほぼ全員が一度は手に取ったことがある、必読書です。DMMのブロックチェーン研究のテックリード・篠原さんらによって書かれた本であり、発刊されてから現在に至るまで多くのエンジニアから支持を受け、今なお開発で使用される名著です。少々ツールや情報が古くなっているものはありますが、本の性質上致し方ないのと、調べれば比較的解決するものばかりですので、この本を読みながらDapps(ブロックチェーンアプリケーション)を開発してみるのが良いのではないでしょうか。

 

今回はブロックチェーンを体系的に理解するための本を様々な領域から選んでご紹介しました。

エンジニアの方であれば、最後にあげた数冊が特におすすめです。(私自身は普段コードを書かないものの、周囲のエンジニアは皆読んでいたので…)ビジネスサイドの方で、何を読んで良いかわからないという方は、とりあえず上から読んでみるのが良いかもしれません。

皆さんのブロックチェーンの勉強が少しでも有意義なものになれば嬉しいです。