本記事ではブロックチェーン関連の法律書で、私が過去に読んだ中からオススメのものをいくつかご紹介したいと思います。
ブロックチェーン周辺の法律は非常に複雑怪奇なのでどんな人にとっても「勉強はしたいけど、よくわからないし、取っ掛かりもない」という印象を抱く方が多いのではないかと思いますが、本記事では法学のバックグラウンドを持たないエンジニアの方や、法学のバックグラウンドを持つものの、ブロックチェーンに関する知識があまりなく不安である、という方でも「これさえおさえればなんとかなる」という本を選びましたので、これらの本の中で気になるものがあれば、ぜひ手にとってみてください。
中央経済社『ブロックチェーンを巡る実務・政策と法』
ブロックチェーンを専門に研究している早稲田大学法学部の久保田隆教授をはじめとするブロックチェーン専門家による共著です。この作者陣がとにかく豪華で、例えば
- 森濱田法律事務所のパートナー・堀天子弁護士
- 国税庁で仮想通貨税制をリードしていた安河内先生
- 日本国内のコンサル・シンクタンクではおそらく一番ブロックチェーンの研究が進んでいる野村総合研究所(NRI)の渡辺翔太氏
などがそれぞれの専門分野について、ブロックチェーン初学者の法学部生向けに詳しく法律上の論点を解説しています。
解説は広く浅く、個別の論点と解説を端的にまとめたにとどまっておりますが、
- 法学部であるが、ブロックチェーンはよくわからず、勉強したい!
- ブロックチェーンについてはよく知っているが、法律上の論点を軽くさらってみたい!
という方にはうってつけです。
商事法務『実務解説 資金決済法[第3版]』
先ほどご紹介した森・濱田法律事務所の堀天子先生による資金決済法の解説です。
日本において仮想通貨の定義はこの資金決済法の2条5項において定義されており、また63条によって仮想通貨交換業を行いたい事業者は所管の財務局長の登録を受けなければいけない旨規定されています。
このように仮想通貨に関連する事業を行いたい場合、まず参照しなければならないとされているのが資金決済法で、この本はこの資金決済法について実務上気をつけるべき点について非常に詳しく書かれています。
特に第7章は一章まるまる仮想通貨交換業について書いているので、「仮想通貨やってます!」「ブロックチェーンやってます!」「イーサリアムやってます!」な人はぜひ一読してみてはいかがでしょうか。逆にかなり実務寄りの内容ですので、法学部の方であっても、ブロックチェーンの事業に馴染みのない場合には、読んでいても味気なく感じるかもしれません。
日経BP社『Fintechの法律』
仮想通貨事業者にとっておなじみの本ですね。
こちらも森・濱田法律事務所の先生方がお書きになっていて、資金決済法について詳しい堀先生や仮想通貨業界にとってはおなじみのベンチャー法務に詳しい増島雅和先生らが仮想通貨関連分野の執筆を担当されています。
Fintech一般に関する法的論点をQ&Aの形で取り上げていたり、イノベーションを阻害しない法的規制のあり方について論じていたりと、規制を目の上のたんこぶに思いがちな仮想通貨業界にとってはとってもありがたい本です。
Fintech全体について広く浅く書いているので、仮想通貨について一冊丸々書いた本ではありませんが、現状金融文脈でのブロックチェーン利用が多い以上むしろフィンテック全体について外観できるこの本はなおさら読んで損はないものになってるんじゃないでしょうか。
商事法務『Fintech 法務ガイド[第2版]』
四大法律事務所のアンダーソン・毛利・友常法律事務所(AMT)のフィンテック専門弁護士オールスターによるFintech解説書です。業界でおなじみの河合弁護士が第5章で仮想通貨についてゴリゴリに解説しているので必見です。
この本の良いところはハードフォーク、クラウドマイニング、仮想通貨投資ファンド、仮想通貨交換業者のM&Aといったかなり業界でもあるあるな法律上の問題について解説が加えられている点です。
個人的には多くの仮想通貨法制の解説本に目を通したのですがどの本も基本的には資金決済法、金商法、ICO、税制についてしか解説していなかったんですよね。なのでブロックチェーン業界のエンジニアやマーケターにとってはちょっと物足りないんじゃないかな、なんて思ったりしてたのですが、この本は最近書かれただけあって、業界人にとってもそれが知りたかったんだよね!となる部分が多く、痒い所に手が届く本だなと思いました。まだ持ってないブロックチェーン業界の人はぜひどうぞ。
また、下記の本もオススメです。
実務家もそうでない人も、ある程度仮想通貨もしくは法規制のいずれかについてそれなりの知識がある人であれば、一冊持っておくと損のない本であり、本サイトではそれぞれの本に関する書評も公開しておりますので、ぜひ一読ください。
【書評】『仮想通貨法の仕組みと実務 ―逐条解説/自主規制団体・海外法制/会計・監査・税務―』は仮想通貨法が簡潔にまとまっていて良い本だった
【書評】『バーチャルマネーの法務(第二版)』は仮想通貨の私法上の性質を体系的にまとめた良書。物権、債権、金銭と仮想通貨の関係は?
【書評】『ブロックチェーンビジネスとICOのフィジビリティスタディ』は最新の仮想通貨規制とビジネスの把握に最適
今回はブロックチェーン関連のオススメ本をご紹介しました。私は広く規制の全体像を把握する意味で、に主に『ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法』『仮想通貨法の仕組みと実務 ―逐条解説/自主規制団体・海外法制/会計・監査・税務―』を参照する頻度が多いです。
みなさんも、この中で気になったものや必要そうなものがあれば、ぜひ読んでみてくださいね。
それでは!
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