闇Webと仮想通貨④ービットコインの「匿名性」

これまで「闇Webと仮想通貨」と題して、仮想通貨が犯罪者の資金決済(資金洗浄)に利用されてしまうという負の側面にフォーカスした記事を公開してきました。

闇Webと仮想通貨①ーTorとBitcoin

闇Webと仮想通貨②ー「Silk Road」とFBIの捜査

闇Webと仮想通貨③ーMt.Goxを巡る意外な議論

仮想通貨、特にビットコインが持つ匿名性こそがこの問題を難しくしているわけですが、この「匿名性」に関して、私見を書いておきたいと思います。

日本における匿名技術と犯罪の関係

米国のシルクロード事件において、FBIがいかに捜査に苦労したかを鑑みるに、日本ももはや匿名技術と犯罪の関係に関して、対岸の火事とは思うべきでないだろうと思います。

これまでに日本で問題になってきた事件として、マウント・ゴックス事件やコインチェック事件がありますが、これらも多くの謎が残された事件であり、真相解明にはほど遠いでしょう。

仮想通貨を用いた資金洗浄は、日本でも行われている

特に仮想通貨を用いた資金洗浄は、実際に日本でも逮捕者が出たケースがあることから、その危険性が容易に認識できます。

これは 不正入手した他人名義のクレジットカードの情報で購入したビットコインを、マネーロンダリング目的で日本円に換金し、他人の口座に送金したとして、警視庁サイバー犯罪対策課が組織犯罪処罰法違反容疑で 2017 年 1 月に2 人の男性を立件したものです。

仮想通貨の使用拡大とともにこのような事件も増えていくものと予想されます。

結局いたちごっこを繰り返しているだけ

Silk Roadに限らず、闇Web上には多くの犯罪用マーケットプレイスが存在しており、いずれもTorと仮想通貨(主にビットコインであるが、Moneroなどもよく利用される)を利用し、秘匿性を高めています。

例えば2017年に閉鎖された米国の巨大なマーケットプレイス「アルファベイ」が第二のSilk Road事件として話題になりました。アルファベイそれ自体は摘発されましたが、同種の闇 Web は日々登場しており、各国の捜査機関といたちごっこを繰り返しているのが現状です。

シルクロード自体もウルブリヒトが創設した(とされる)オリジナルのサイトは閉鎖されたものの、その後にシルクロード2.0や3.0が登場していることから、闇Web上の違法行為をなくすことは非常に困難です。

現在のSilk Road3.1では匿名通貨Moneroでの決済も可能なようで、匿名技術の進化に伴い、サイバー犯罪はますます「足がつかない」ものになっていくでしょう。

少なくともこのような闇 Web において当面ビットコインが決定的な決済手段として使用され続けるでしょうし、まだまだ伸び盛りの新技術・ビットコインの動向を注視しながらも、その悪用に対処するための早急な法整備が待たれるといえます。

もちろんイノベーションを阻害しないで欲しいので、そのバランスが難しいだろうと思われますが…

最後に本件が示唆する、米国法の域外適用という法的な課題を「闇Webと仮想通貨⑤ーサイバー犯罪と米国法の域外適用」の記事で解説していきます。法学部向けで、専門用語が多いですが、どうぞ最後までお付き合いください。

次記事:闇Webと仮想通貨⑤ーサイバー犯罪と米国法の域外適用

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